研究室紹介

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ようこそ、大阪市立大学 応用物理学科 数理工学研究室へ!

本研究室では、工学と数理科学との接点に広がる理論的な問題を広く取り上げます。特に、カオス、ソリトン、フラクタルという現代のキーワードを用いて、物質の非線形非平衡状態の理解をめざしています。具体的には、メゾスコピック系の量子輸送と量子カオス、非平衡磁性体のパターン形成とカオス、有機導体の動的応答とソリトン、超伝導体接合列における量子輸送現象を主として研究しています。量子コンピュータ、量子光学や観測問題、ガラス転移、その他、哲学的な問題(?)も手がけています。
 本講座は1992年にまったく新しいスタッフで発足し、流動性に富んだ研究組織のもとで、時代の先端を行く新しいテーマを開拓してきております。ぜひ、数理工学研究室に進学 して、みなさんの潜在的な能力を展開して下さい。

目次
1.研究内容の紹介
2.研究室の活動について
3.大学院への進学を希望される方へ

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1.研究内容の紹介

本講座では、次のような研究テーマで研究を行っています。
(詳しくは、スタッフや院生個人ページの紹介を開いてみて下さい。)

[1]量子カオスとメゾスコピック物理:

古典的にカオスを示す系では、位相空間の安定なトーラス構造が崩壊し、量子化すべき作用(断熱不変量)が消失する。このため、量子力学を古典的にカオスを示す系に適用するとさまざまな興味深い問題が発生する。これが量子カオスという新しい分野の研究テーマである。 特に、古典的にカオスを示す系の量子動力学は単に準周期的なふるまいを示すだけでカオス的ふるまいをまったく示さず(カオス系での量子=古典対応の消失)、1つの謎である。
 他方、超微細加工技術で制作されるメゾスコピックあるいはナノスケール構造の電子デバイスを用いて量子力学の枠組みの意義と限界を明らかにすることが可能になっている。スタジアムビリアードやシナイビリアードはカオスを示す力学系の典型例として近年研究が集積しているが、半導体のへテロ接合界面で本当にこのようなビリアードがナノスケール規模で制作されバリスチックな量子輸送の測定がなされつつある。
 このような事情を背景として、半導体界面の2次元フェルミオンガスの反磁性帯磁率や電気伝導度を通じて量子カオスを観測することが可能になってきた。我々は、最新の実験に密着しながら、メゾスコピック系の量子輸送とカオスに関する研究を押し進めている。

[2]磁性体(超伝導体を含む)の非線形、非平衡状態の研究:

振動磁場下の磁性体のモルフォロジカルな非平衡相転移の機構を明らかにしていく。 具体的には、振動磁場下での薄膜磁性体におけるパターン形成を対象とする。これに ついては、多彩な実験結果が集積しはじめており、又、基礎方程式(Landau-Lifshitz 方程式)も確立している。流体乱流に比べ、時間のスケールが短く、短時間で多彩な 構造を観測できるという利点がある。スピン波のモード結合理論を発展させ、磁壁や 磁区構造の関与するモルフォロジカルな非平衡相転移の統一的な理解をめざす。
 この種の研究は、たいへん一搬性があり、同時に非平衡超伝導、超流動における 渦やテクスチユアの動力学の解析もおこなう予定である。

[3]一次元電気伝導体とソリトン励起:

一次元電気伝導体の典型であるトランス型ポリアセチレンのフォノン構造、赤外吸収、ラマン散乱、ソリトンの伝搬運動などの理論的研究を行っている。とりわけ、非線形励起の概念であるソリトンによる赤外吸収ピークの理論的予測は実験的にも確認されている。また、絶縁体・金属間転移や電場下におけるソリトンの構造と運動、ソリトン対やポーラロン対の衝突の際の安定性、スピン密度波状態での非線形励起の構造と運動などを研究している。さらに、スピン密度波の数値計算において、指数演算子の高次分解法を発展させている。

[4]超伝導接合列・量子ドット列における量子輸送現象:

近年の微細加工技術により、マイクロメートルスケールの超伝導体あるいは半導体をもちいた微小量子ドット列が作成され、輸送特性などが実験的に研究されるようになってきている。このような微小接合では、電子間の相互作用の影響が大きいため、相互作用の効果を取り入れた計算を行う必要がでてきており、特に長い接合列では電子間の相互作用による現象が注目されつつある。
このような状況を背景にして、接合列における電子間の相互作用のために生じる現象を研究している。共鳴トンネル、ランダムネス、電荷ソリトン、境界における相関効果、ノイズ、クーロンドラッグなどの現象を、厳密対角化、量子モンテカルロ法および解析的手法によって明らかにしていこうとしている。


2.研究室での活動

本講座では、以下のような活動を行っています。

(1) 速報(セミナー)

金曜日の午後3時より工学部B棟4階402号室にて、速報と呼ばれる研究室セミナーが行われます。(曜日や場所は変更されることがあります。)このセミナーは、学生と教員あるいは学生間のアカデミックな議論を行う大切な場ですので、当講座に所属する学部4年生および大学院の学生は、必ず参加するようにしてください。

このセミナーでは、教員・学生が持ち回りで発表を担当し、研究に関する最新の報告を行っています。本講座で理論の研究を始めたばかりの人は、論文紹介をやってもらいます。

速報のタイトル・要旨などはこちらにあります。本講座以外の方の参加ももちろん歓迎します。

(2) 洋書購読

卒業研究生として配属された四年生を対象に、前期期間中に週に一回のペースで、洋書の本読みをしています。2003年度は、J. J. Sakurai, Modern Quantum Mechanicsを読みました。これは必修単位ですので本講座の学部生は必ず参加するようにしてください。

(3) 輪講

主に修士の学生が中心になって本読みをしています。4年生も参加しています。まとまった知識を仕入れる絶好の機会ですので積極的な参加を求めます。

(4) 理論コロキウム

月に1〜2回ほど、他大学・研究所から講師をお招きして、理論セミナーを行っています。基本的に火曜日か金曜日に行っていますが、講師の都合などにより他の曜日に行うこともあります。最新の研究について第一線に立つ研究者に、話をしていただける機会は貴重ですし、大いに刺激となります。本講座の学生は必ず参加するようにしてください。

理論コロキウムのタイトル・要旨などはこちらにあります。本講座以外の方の参加ももちろん歓迎します。

(5) ゼミ

以上のほかに、個別に研究遂行に必要と思われる知識をつけるために、個人的に本や論文などを読んでもらい、ゼミをやってもらうことがあります。輪講の形式をとることもあるし、一人が一回発表して終わりということもあります。研究上とても大切なプロセスとなりますので、よく準備して発表するようにしてください。


3.大学院への進学を考えている人へ

大学院時代は、人生の中で最も重要な時期です。大学院では、学部学生の時代以上に、教員と学生の間で研究をめぐる直接交流の日々が続きます。友人や先輩後輩、家族とならんで、教員との直接の学問的そして人格的交流が自分の将来を大きく左右します。

たしかに、「大学受験」の時の大学選択は、偏差値などが重要な判断基準になります。しかし、「大学院受験、大学院進学」に際しては、自分の適性をよく考えながら、指導教員の専門分野、資質、アクティビティ(活躍度)、将来性などを見極めて研究室を選ぶことが重要です。「大学の偏差値やブランド」と「個々の大学教員の研究者としての優劣」にはあまり相関がありません。いつまでも偏差値にとらわれて、超大手大学だけにtargetを限定しないことが大事です(とくに、大学院で博士号の学位を取得し研究職をめざす人は、このことに早めに気づかないと後で取り返しのつかないことになります)。とにかく本研究室を選ぶ前に、インターネット検索等で、全国的視野で全国のさまざまな研究室を調べてください。本研究室が自分にとって最適であると判断したら、本研究室を受験してください。あとは大学院入試に合格して前進するのみです。当り前のことですが、本研究室では、学内出身者と学外出身者の両方に対して入口が平等に開かれています。

本研究室では、流行のテーマを追いかけたり、大多数の研究者が殺到するテーマ(どこでも誰でもやっているテーマ)にはあまり興味がありません。むしろ、世界に先駆けて、新しい学問分野自体を創造することを重視しています。そのため、大学院生の積極性や主体性が極めて大事となります。教員と学生が一体になって、新しいテーマを幅広く発掘し、良い解決法を模索します。大学学部までの教育は、既成の知識を習得することが中心でした。つまり、教員からテーマを貰い、教員の指示通りに計算をすすめることが基本でした。しかし、大学院では、既成の知識を身につけるだけではなく、常識を疑い、基礎法則すら存在しない混沌の中から新しい見解を構築していくことが必要です。また、教員のマンネリ化した発想を批判し踏み越えていくこともしばしば重要です。つまり、教師−学生の関係を保ちながらも学問研究においては互いに独立な人格として相互に厳しく批判し高め合うことが大学院における人間関係の基本です。

本研究室は理論主体の研究室です。宇宙と自然現象の背後に潜む未知の法則をつかみ取り、それを技術的実践において目的意識を持って適用することをめざす研究室です。理論研究は、世俗離れしておりきわめて孤独です。また、望む計算結果がなかなか得られず、人知れず苦しむこともしばしばあります。苦労して得られた結果が、あまり楽しいものでなかったりすることもあります。そのため、何のために学問研究をやるのかを絶えず自分自身で確かめながら研究を続けることになります。このような厳しさを支えるものが、自然の真理探究に至上の(人生の究極の)価値を見い出す強靱な精神です。1つの研究結果に満足できなければ、より根源的で崇高な研究テーマの発掘に向かいます。真理探究なるものには興味は無いが、とにかく修士号や博士号の学歴やブランドが欲しいという価値観を持つ人にとって、本研究室は居心地良くありません。しかし、未知の世界の真理探究という冒険的な営みにおいて喜怒哀楽を共にしたいと思う人にはなかなか味わいのある、世界最高レベルの研究室だと確信します。

なお、本研究室の大学院卒業者の進路ですが、修士号取得者は全員、民間企業や公務員に就職しています。博士号取得者はこれまでのところ、数はそれほど多くありません。しかし、博士号取得後、全員が研究職に就任し、研究の最前線で活躍しています。眼の光り輝いた学生のみなさんの受験と入学(進学)を心から期待しています


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